カクニ茶藤は15年という歳月をかけ、一つひとつの茶畑を有機栽培へと転換し、土づくりから出荷までを一貫して担う体制を築いてきました。その歩みは、他にはない価値を持つものでした。しかし、その価値は十分に伝わっていませんでした。だから私たちは、ブランドストーリー、ウェブサイト、そして商談の場でバイヤーが目にするセールスストーリーまで、カクニ茶藤が世界と出会う方法そのものを再構築しました。
クライアント
カクニ茶藤——静岡を拠点に、有機抹茶と日本茶の栽培・製造・輸出を手がける企業。有機認証を取得した約8,000エーカーの茶園で、10の生産者グループと連携しています。
エンゲージメント
セクター
主な成果
カクニ茶藤が15年かけて築いてきた有機栽培への取り組みを、世界のバイヤーが価値として理解し、行動につなげられるよう、英語を起点としたデジタルプレゼンスとセールスストーリーを構築しました。
カクニ茶藤は、日本茶業界でも類を見ないストーリーを持っていました。15年という歳月をかけて山の斜面を一つひとつ有機栽培へと転換し、土づくりから出荷まで一貫した体制を築き、生産者を100%買い取りモデルで支えてきました。茶農家の74%が60歳を超え、茶農家世帯数が2008年以降半減しているという厳しい業界環境のなかで築き上げた取り組みです。
しかし、その価値のほとんどは、海外のバイヤーには伝わっていませんでした。旧サイトは、暗く詩的な世界観と印象的な写真で雰囲気を演出していましたが、構成の中心にあったのは会社であり、バイヤーの意思決定ではありませんでした。卸売、OEM、R&Dといった項目も、内容を理解できる説明ではなく、単なる見出しとして並んでいるだけでした。生産能力、認証、製造工程、取引条件といった実務的な情報を求めて訪れた海外バイヤーは、本来必要としていた情報ではなく、雰囲気だけを受け取ることになっていたのです。
カクニ茶藤に必要だったのは、より美しいパンフレットではありませんでした。お茶の背景にある人々と、15年にわたる有機栽培への取り組みという本当の強みを伝えながら、調達担当者が商談を待たずに必要な情報を得られるプレゼンスでした。
カクニ茶藤の経営陣は、その考えにすでに名前を与えていました。「不易流行」——変わらないものと、変わり続けるものをともに大切にする哲学です。私たちは、その思想を軸にブランドナラティブを構築しました。変えてはならないもの。それは、土壌、ものづくりの技、そして茶を育てる人々への責任。変えなければならないもの、それは日本茶を世界へ届ける方法です。
このひとつの思想が、すべてのページとすべてのスライドに一貫した軸を与えました。伝統を信頼の証とし、変化を未来への約束とする。その考え方が、カクニ茶藤を単なる供給者ではなく、業界を導くブランドとして語れる存在へと変えたのです。
ナラティブより
「畑から輸送まで、妥協なきお茶を。」
「それは、茶葉の前から始まる。そして、一杯を飲み終えたあとも、長く続く。」
「伝統に根ざし、次の時代へ。」
守るべきものと、変えるべきもの。その両方を明確に理解している企業だからこそ生まれる言葉。
新しいウェブサイトは、英語を起点に設計しました。そして、その構成の中心に置いたのは、世界のバイヤーが実際に抱く問いです。「何をつくっているのか」「どのように栽培・加工されているのか」「誰が育てているのか」「品質をどう証明できるのか」「どうすれば取引を始められるのか」。
それぞれのページが、その問いに答えます。土づくりから出荷までの4段階システム、各種認証、そしてSOMA生産者ネットワークを、装飾ではなく「信頼の根拠」として伝えました。その結果、営業担当と話す前から、サイトそのものが調達担当者の疑問に答えられるようになっています。
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旧サイトは、バイヤーに「感じる」ことを求めていました。新サイトは、「判断する」ための材料を提供します。ブランドの誇りと写真はそのままに、カクニ茶藤とはどんなブランドなのか、なぜそれが重要なのか、そして次に何をすべきか——その物語がサイト全体を通して一貫して流れる構成へと生まれ変わりました。
ビフォー · chato.co.jp
アフター · 新しいプレゼンス
プレゼンスは、ウェブサイトだけで終わりません。私たちはバイヤー向けプレゼンテーション『The Next Chapter of Japanese Tea』も設計しました。日本茶産業が直面する危機、15年をかけて築いた答え、そして認証から取引条件まで、バイヤーが意思決定に必要な根拠。そのすべてを、オンラインと同じストーリーで伝えられるようにしました。
カクニ茶藤の出荷体制——30gの小売用パウチから20kgの業務用パッケージまで
私たちはカクニ茶藤のブランドプレゼンスを、ひとつながりの仕組みとして設計しました。まずナラティブをつくり、そのナラティブを軸にウェブサイトを構築し、さらに商談の場へとつながるセールスストーリーへと展開しました。
01 · ストーリーを見つける
素材は、すでにそこにありました。高齢化が進む茶業、15年にわたる有機栽培への転換、そして生産者が茶づくりを続けられる100%買い取りモデル。私たちはそれらを「不易流行」という思想を軸に整理し、見出しから製品ページまで一貫して伝わる英語のナラティブを構築しました。
02 · プレゼンスを再構築する
私たちは、世界のバイヤーの意思決定を軸に、英語ファーストのウェブサイトを設計しました。ホーム、特長、生産者、製品・サービス、会社案内、お問い合わせ。4段階の生産システム、各種認証、そしてSOMA生産者ネットワークを、装飾ではなく「信頼の根拠」として位置づけています。
03 · 商談の場へつなげる
私たちは、同じストーリーを商談やバイヤーとの対話へと運ぶセールスプレゼンテーションを設計しました。茶業が直面する課題、4段階の生産システム、そして取引条件まで。ウェブサイトとプレゼンテーションが競合するのではなく、互いを補完し合うように設計しています。
カクニ茶藤は今、ひとつのストーリーを二つの形で世界へ届けています。最初の問い合わせの前にバイヤーの疑問へ答えるウェブサイト。そして、その同じナラティブを商談の場へと運ぶプレゼンテーション。認証、生産能力、製造プロセス、そして生産者の存在は、もはや雰囲気の中に埋もれてはいません。それらが、ブランドの説得力になっています。
15年をかけて、山の斜面を一つひとつ有機栽培へと転換してきた企業が、ようやくその歩みを正しく伝えられるプレゼンスを手にしました。世界のバイヤーが求める言葉で、構造で、そして確かな根拠とともに。
「REMARKチームは表面的なデザインにとどまらず、弊社の成り立ちや理念、想いを丁寧に理解し、それらを言語化した上でデザインへと落とし込んでくださいました。 そのプロセスは、私たち自身が自社を見つめ直す貴重な機会にもなりましたし、会社のアイデンティティが言語として明確になったことは大きな財産だと感じています。 もちろん、最終的なデザインの仕上がりにも大変満足しています。」
森藤 真帆
カクニ茶藤 代表取締役